(三重)法廷通訳人

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裁判員制度開始に備え、津地裁で実施された模擬裁判
 裁判員制度がスタートし、地方の裁判所では、ただでさえ不足気味の刑事裁判の「法廷通訳人」の確保が大きな課題となっている。集中して審理を行う裁判員裁判では、連日の拘束にも対応する必要があるためだ。

(加藤雅浩)

 津地裁によると、昨年4月1日現在、県内では36人が通訳人候補者名簿に登録している。中国語の通訳人が14人と最も多く、スペイン語とポルトガル語が各7人、以下、英語、タガログ語と続く。

 支部を含む県内の裁判所で昨年、法廷通訳人が参加して判決が言い渡された事件数は115件で、そのうち、裁判員裁判対象事件は9件だった。最高裁によると、裁判員裁判の約7割が3日以内に終わるが、約2割が5日以内、約1割が5日を超えるという。法廷通訳人のほとんどはほかに職業を持っており、実際に稼働している人数は登録者数よりも少ない。津地裁では現状でも、他県の通訳人に依頼をすることが多いという。

 タガログ語の法廷通訳人を務める名古屋市の福岡デビーナさん(55)は、英語講師も兼ねているが、依頼を受け、東海、北陸の各県や京都府にも赴く。今月5日も、津地裁と四日市支部で仕事をこなした。福岡さんは、「事件が重なると負担が集中する。大幅な増員が必要なのでは」と指摘。裁判員裁判については、「遅くとも1か月半前には地裁から通訳人の依頼がくるため、スケジュール調整はある程度可能だが、拘束が3日間続けば、身体的、精神的な負担は重い」と心情を吐露する。

 津地裁は「事前の協議で、複数の通訳人に依頼することもある。正確な通訳のためには、休廷も考えられる」としている。

 津地裁では数年前から、県内の大学・短大6校と県国際交流財団、四日市国際交流協会の計8か所にパンフレットを設置、募集を呼びかけている。毎年数人の応募があるという。候補者名簿にない少数言語のケースでは、大使館や大学から即席の通訳人に参加を依頼することになる。津地裁総務課の鈴木勝課長は「長期的な視野に立ち、毎年少しずつ増員を図るしかない」と話す。

 法廷通訳人は、難解な法律用語を理解し、公判の流れを把握しながら、質問や主張などを正確に伝える「熟練の技」が求められる。裁判を誤った方向に導かないためにも、高い技術を持った人材の育成と確保が望まれる。


(2009年6月13日 読売新聞)

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