裁判員裁判:初の通訳付き、きょう埼玉で ニュアンス伝わるか、翻訳「心証に影響も」

http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20090910/CK2009091002000144.html


 外国人の被告に通訳を付ける全国初の裁判員裁判が8日、さいたま地裁(大谷吉史裁判長)で始まる。弁護士によると、被告は起訴内容を認める方針。刑の重さが争点になるが、専門家は「通訳が微妙なニュアンスをどう翻訳するか。裁判員の心証に影響する可能性がある」と指摘する。



 審理されるのは、2件の強盗傷害罪に問われた埼玉県戸田市のフィリピン国籍の男(20)。起訴状によると、男は19歳だった昨年12月、他の少年2人と共謀し、さいたま市内の路上などで男性に暴行を加えて重軽傷を負わせ、現金計約3万7000円やパソコンなどを奪ったとされる。



 さいたま地検によると、被告は日常会話程度の日本語はできるが、公判にはタガログ語の通訳が2人付く。金城学院大の水野真木子教授(通訳論)は「同じ謝罪の言葉でも『許してください』と『申し訳ありません』では、反省の深さの伝わり方が異なる。裁判の信頼性にかかわるので、慎重に通訳すべきだ」と指摘。外国人による傷害事件の模擬裁判では、事件のきっかけとなった被害者の侮辱的な言葉の訳し方で、裁判員の被告に対する同情の度合いに違いが出たという。



 公判は4日間で、8日午前に裁判員の選任手続きがあり、午後1時半に開廷する。9日の証人尋問、10日の論告・弁論などを経て結審、11日午後に判決言い渡しの予定。通訳を介したやり取りに時間がかかるため、地裁は審理日程に余裕を持たせた。【飼手勇介】




毎日新聞 2009年9月8日 東京朝刊

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