「共感得るにはどうしたら」弁護士が振り返る裁判員裁判

「共感得るにはどうしたら」弁護士が振り返る裁判員裁判 (1/2ページ)
2009.9.24 13:22
http://sankei.jp.msn.com/region/kanto/saitama/090924/stm0909241323004-n1.htm

 さいたま地裁で8日から連続4日間開廷された全国初の通訳付きの裁判員裁判。公判を担当した神尾尊礼(たかひろ)弁護士が、産経新聞の取材に応じた。自身初めての裁判員裁判だったが、弁護のポイントを「裁判員に共感してもらえる主張ができるか」に据えていたことなどを明かした。

 公判では、フィリピン国籍で当時19歳だった男(20)が平成20年12月に起こした2件の強盗致傷事件が審理された。

 神尾弁護士は審理中に目の当たりにした男の涙に、反省の度合いが予想を超えて深くなったと感じたという。「裁判員の審理だからこそ、あれだけの反省ができるようになった面もあると思う」と話した。

 裁判員裁判は被告にとってメリットがあったとする一方、弁護の準備は予想以上に時間がかかったという。「公判前整理手続きまでは通常通りスピーディーに終わったのに、その後が大変だった」と苦笑い。

 気を使った点の一つが言語。男は日常会話程度の日本語ができた。「通訳を介するより、被告の言葉で直接語った方が裁判員には伝わるのでは」との素朴な感覚から「被告が分かる日本語を使うための打ち合わせを入念にした」という。

 審理では男ができる限り日本語で供述することを大谷吉史裁判長に求め、了承された。「裁判員裁判でなければ通訳を使っていた」と明かした。

 また、全国各地の裁判員裁判の判決が「かなり検察寄り」と感じたことから、主張の仕方を練り直した。



「職業裁判官なら伝わる『厳しい生い立ちだから』『必要なカネがなかったから』といった被告に有利な事情でも、裁判員にしてみれば『だから何』ということになりかねなかった」

 そこで、従来のように有利な事情を列挙するのではなく、被告の「反省」を弁護の中心に据えるなど、裁判員の共感を得られる強弱を付けた主張を心がけたという。

 検察側が懲役6年を求刑したのに対し、最終弁論で懲役3年6月を主張した理由については「争点のある裁判で、検察側が結論を示しているのに、弁護側が示さないのは裁判員に失礼」と考えたから。「今まで弁護側がやらずに怠けていたところ。これは義務だと思う」と語った。

 最終弁論は直前まで「裁判員にどうしたら共感してもらえるのか」という観点から修正し続けた。11日には男に懲役5年の判決が言い渡された。

 一仕事終えた今、「紙だけで行う裁判の時代から、その場で説得する裁判に変わった。夢見ていた米国の弁護士になったみたいだった」と笑みを浮かべた。

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