裁判員裁判:フィリピン人被告に実刑 言葉の壁「意図通じた」--さいたま地裁

http://mainichi.jp/select/jiken/saibanin/news/20090912ddm012040147000c.html

 外国人の被告に通訳を付けた初の裁判員裁判で、さいたま地裁は11日、2件の強盗傷害罪に問われたフィリピン国籍の男(20)に懲役5年(求刑・懲役6年)の実刑判決を言い渡した。大谷吉史裁判長は「裁判官も裁判員も一日も早く立派に更生することを期待しています」と説諭した。



 弁護士は、検察の求刑について「(求刑の8割の判決を前提にした従来の)『八掛け求刑』でなく、ストライクゾーンを狙った感じ。(判決は)法定刑最低の6年をさらに下げる酌量減軽をしていただいた」と評価した。



 公判後の会見には、補充の2人を含む裁判員8人が出席。通訳を介した法廷でのやりとりに関し、30代の会社員、鎌田祐司さんは「(質問が)一度で伝わらないことがあったが再質問するなどした。こちらの意図が不十分なまま(審理が)進んだことはないと思う」と話した。



 判決によると、被告は他の少年2人と共謀。昨年12月19~26日、埼玉県内の路上で男性1人ずつに暴行し、現金計約3万7000円などを奪った。【飼手勇介、武本光政】



 ◇口頭主義を重視、通訳人の負担増

 裁判員裁判は供述や証言をじかに聞く「口頭主義」をより重視するため、従来の裁判以上に通訳人の負担は増える。さいたま地裁の審理は4日連続だったうえ証人が2人出廷。タガログ語の通訳2人が交代で務めたが、地域によっては裁判所が複数の通訳人を確保できるかは課題となる。



 今回、地検が論告の内容を通訳人に伝えたのは論告求刑公判の前夜。地検幹部は「準備時間が少なく、通訳人には大変な苦労があったと思う」と話す。弁護側も事前に弁論要旨を通訳人に渡したが、法廷では要旨を読まずに弁論し、通訳人は臨機応変な対応を求められた。【飼手勇介】


毎日新聞 2009年9月12日 東京朝刊

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